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刺青/藤沢周 起承転結はいらない。

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 サイバーパンク的な世界観とハードコアな文体が最高の小説です。独特な雰囲気が好きで、何度も読み返しました。藤沢周先生、大好きです。

  一流作家はみんな独特の文体があると思うのですが、藤沢先生の文章はHIPHOP感があって本当にかっこいいですね。

刺青 (河出文庫―文芸コレクション)

刺青 (河出文庫―文芸コレクション)

  • 作者:藤沢 周
  • 発売日: 1999/02/01
  • メディア: 文庫
 

  

内容は

彫物師の前にあらわれた十八歳の少女は言った。「彫ってください」。“刺青”に賭けられた生と死の美学をめぐりつつ、奈落の底へ落ちゆく人間たちの闇をえぐる芥川賞作家初の長篇。耽美かつ残酷そして超過激なハードコアロマン。

刺青 - 藤沢周 - Google ブックス 

 

 この小説の主人公である彫師は廃業するつもりですが、なかなかやめようとしません。

 奇抜な図案を機械彫りで入れる若者、刺青を維持するために訪れる極道、そして、自分を犯す男に復讐するために入れる女。様々な客がやってきますが、この物語の中で彼ら(彼女ら)の刺青が完成することはありません。

 刺青は一度入れてしまうと基本的には消せない、不可逆的な身体改造です。ですので、刺青は特別な思いがあって入れるもののはずですが、彫師はその思想性を最後まで否定し続けます。

 さらに面白いのは刺青を入れに来る客たちにも、いまいちはっきりとした思想性がないところです。

 

「人をのみ渡し渡しておのが身は岸に上がらぬ渡し守かな」刺青は彫師の作品でもない、むしろ誰のものでもない。

 刺青にオチ(意味)はない。それと同様にこの物語にもオチ(結末)がない。起承転結のない不思議な小説です。 

 

 夏の暑い日の夜、散らかった場所で読むのにお勧めの一冊です。ページ数136ページと短めの小説なのですぐに読み終わりますよ。

 

 藤沢周先生の作品で他のお勧めは

  • 『SATORI』(1995、河出書房新社)
  • 『ソロ』(1996、講談社)

 です。初期作品ばかりですが…。非常にとがってます。

 『SATORI』はまるで幻覚の追体験のような不思議な読後感があります。 

SATORI(サトーリ)

SATORI(サトーリ)

 

 

 

 ご拝読ありがとうございました!

 

 ちなみに藤沢先生の作品で映像化されているものもあります↓

武曲 MUKOKU

武曲 MUKOKU

  • 発売日: 2018/01/06
  • メディア: Prime Video