しょぼ輪

しょぼい30代自転車屋のブログ

プロショップが一般自転車のパンク修理や整備を断る件について

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 先日、とあるツイートを見て思うところがあり、記事にしました。

 

 そのツイートはこちら↓ 

 自転車漫画の名作中の名作「並木橋通りアオバ自転車店」シリーズの作者宮尾岳先生のツイートです。 

 抜粋されている部分もリアルタイムで見てました。その当時は特に何も思わなかったのですが、今になってみるとなんだか違和感。

 

 

 言語化が難しく、変なリプをしてしまいました。その後、そこそこ論争が起き、いろいろな意見を目にして何とか言語化してみようと思いました。

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目次

 

なぜプロショップは一般車の修理を断るのか?

 私は自転車屋を営んでいますが、いわゆるプロショップではなく一般車(いわゆるママチャリ)専門店です。

 そして、自転車屋である以上、高額な自転車を持ち込まれることがありますが、修理内容や持ち込まれた自転車によってお断りをさせていただく場合があります。

  断る理由としては…

  • 傷つけたり、破損させたときに弁償や交換ができない
  • 専門知識が足りない場合
  • 自身の店で取り扱えないパーツが使われている

 などなど。で、一般自転車専門店が高額なレース車の修理を断った時に文句は言われるでしょうか?

 人によっては言う方もいるでしょうが、たぶんあまり文句は出ないでしょう。仕方ないねくらいの感じだと思います。

 そもそも、一般自転車(ママチャリ)は車に例えると軽自動車、ロードレーサーはスポーツカーなわけで、スポーツカーを町の整備工場に持っていっても整備は受けてもらえないわけで、逆もまた然りです。

 さらに、必要となる部品、専門知識、お互いに違ってきます

 私は一般自転車、電動自転車はかなり整備知識がありますが、最新のロードバイクの電動コンポーネントなどの知識は全くありません。逆にプロショップスタッフでも一般自転車の知識がない人もいます。

 

 ですが、これが自転車の話になると、今回の宮尾先生のツイートになっちゃうわけで。 「一流は誰の挑戦でも受ける」みたいな謎の根性論?も出てくるのです。

経済合理性をもとに考えてみる

 自転車屋も他の事業と同様、営利事業です。儲けなければやっていけません。

 最低限クリアしないといけない水準があります。

 

 私のお店を例に具体的な計算をすると…

  • 一時間当たり4000円以上の売り上げ
  • 一客あたり3500円以上の売り上げ
  • 一日8件以上の集客(お金を払うお客さん)

 などなど。従業員もいない私の店でこれが最低限です。

 プロショップは初期費用、客単価、経費すべて一般車専門店に比べて高くなります。そして、常連客への依存度が比較的高いです。よって、数字はもっとシビアになります。

 

 つまり、今後の見込み客にもならない低単価客の修理に当たることの機会損失がかなり高くなるのです

 他にも、一般自転車のパンク修理はかなりの確率でチューブ交換、もしくはタイヤ・チューブ交換になります(だいたい60~70%程度)

 一般車のパンク修理を受けるなら、最低限のタイヤ・チューブ在庫を持たなければなりません。そして、これらの在庫を持つこともまたコストになります。

 

 まとめると、プロショップが一般車の修理を受け付けないのは不親切なのではなく、コストと利益を考えれば断ることが合理的であるということです。

 一流、三流とかいう次元ではなくて、それを受け付けることはコストに見合う利益があるかどうか、それだけの単純な話だと私は思います。

 

 追記:この辺もう少し掘り下げました↓ 

kyomu-cycle.hatenablog.com

 

困った人は助けるべきだという社会通念 

 人助けは美しい行為です。損を承知で行動できる人は素晴らしいです。ですが、それを押し付けるのはなんか違うよなと思います。

 極端な話ですが、同調圧力で特攻隊に志願させた旧日本軍と同じ話ですよね。

 

  宮尾先生のツイートになんだかモヤっとしてしまったのは価値観を押し付けられていると感じたからかもしれません。自転車屋かくあるべし的な。

もっとお互いにゆるくありたい 

 

 

 価値観の合わないものから離れる自由。大切にしていきたいですね。

 

 ご拝読ありがとうございました!

 

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