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【解説】女性首相が誕生したら、ジェンダーギャップ指数はどれだけ上がるのか?


 日本のジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index)は、2023年時点で148カ国中118位
 特に「政治分野」でのスコアが壊滅的に低く、このカテゴリ単体では139位に沈んでいます。

 近年、高市早苗氏をはじめとした女性政治家が首相候補として取り上げられることも増えましたが、
 「女性首相が誕生したら、国際的なジェンダー格差評価はどう変わるのか?」について、具体的に語られることはほとんどありません。

 

 この記事では、女性首相が実現した場合にジェンダーギャップ指数(GGI)の数値・順位にどれほど影響を与えるのかを、指標の構造から読み解いていきます。

 

 


そもそも「ジェンダーギャップ指数」とは?

 世界経済フォーラム(World Economic Forum)が毎年発表している、「男女間の格差」を数値化したグローバル指標です。

 指数は4つのカテゴリの平均で決まり、それぞれが同等の重みで扱われます。

 

カテゴリ 内容
経済参加と機会 労働参加率、賃金格差、管理職比率など
教育 初等〜高等教育の就学率
健康と生存 平均寿命、出生時性比など
政治的エンパワーメント 議員・閣僚比率、国家元首の在任年数など

日本の弱点は「政治」

 日本は、教育や健康分野では男女格差がほぼ解消されている一方で、

 政治分野のスコアが極端に低い(139位)というのが最大のネックです。

 

 その理由は以下の通り:

  • 女性国会議員の割合が10%台

  • 女性閣僚がごくわずか

  • 過去50年間に女性首相が一度もいない(←ここが本記事の主題)


「国家元首の女性在任年数」はスコアに影響大

 GGIの「政治的エンパワーメント」カテゴリの中には、以下の3つのサブインジケーターがあります:

  1. 国会議員に占める女性の割合

  2. 閣僚に占める女性の割合

  3. 国家元首を務めた女性の在任年数(過去50年間)

 この3番目は非常に特異で、「就任したことがあるかどうか」だけで評価が大きく変わる項目です。

◉ たとえば:

  • フィンランドやドイツは、女性首相・大統領経験があるため、ここで高得点。

  • 日本は「0年/50年」で、完全なゼロ評価。


女性首相が1年でも務めれば、指数はどう変わる?

 仮に高市早苗氏などが1年間首相を務めた場合、この「国家元首女性在任年数」は0 → 1/50(=2%)に改善されます。

 

 これが全体の政治スコアにどの程度影響するかをシミュレーションすると:

  • 政治カテゴリスコア:およそ0.06 → 0.09〜0.11程度に改善

  • 総合スコア:0.650前後 → 0.670前後に微増(仮定)

 順位に換算すると、10〜20位前後の上昇が期待できます。

 これは、年次報告で毎年数ランクしか動かない他国に比べれば非常に大きなジャンプです。


でも、それだけで「男女平等な国」になるわけではない

 注意点として、女性首相が誕生しただけでは「真の男女平等」が達成されるわけではありません。

 

 スコアが一時的に上がっても:

  • 継続的な女性の政治進出

  • 経済分野での格差是正(特に賃金・管理職登用)

  • 社会的なジェンダーバイアスの解消

といった広範な取り組みがなければ、数値もすぐに頭打ちになります。


結論:女性首相誕生は「象徴」であり「数値改善の起点」

  • 女性首相が誕生すれば、ジェンダーギャップ指数の「政治」カテゴリは即座に改善

  • 総合順位にも、10〜20位の上昇という現実的な影響が出る。

  • ただし、それだけで「日本のジェンダーギャップが解消した」とは言えない。

  • 指標の構造を理解し、象徴性と制度的変化の両方を進める必要がある。


 データで語るべきことが感情論で消費されてしまう時代。

 だからこそ、こうした「構造を理解したうえでの議論」が今、求められているのかもしれません。

 

おまけ:有名な女性首相

名前 在任期間 主な特徴・業績
マーガレット・サッチャー イギリス 1979〜1990(11年) 「鉄の女」、新自由主義改革、フォークランド紛争指導
アンゲラ・メルケル ドイツ 2005〜2021(16年) 長期政権、EUの安定化、移民政策、理系出身の実務派
インディラ・ガンディー インド 1966〜1977、1980〜1984 インド初の女性首相、強権的政策、暗殺され退任
ベナジル・ブットー パキスタン 1988〜1990、1993〜1996 イスラム圏初の女性首相、政権交代と混乱、暗殺される
ジャシンダ・アーダーン ニュージーランド 2017〜2023(6年) 若手首相、共感型リーダー、コロナ対応、育休中に執務も
サンナ・マリン フィンランド 2019〜2023(4年) 世界最年少首相(就任時34歳)、SNS発信でも注目
テレーザ・メイ イギリス 2016〜2019(3年) EU離脱(Brexit)交渉を主導、混乱の中で辞任
ゴルダ・メイア イスラエル 1969〜1974(5年) 中東初の女性首相、第四次中東戦争時に在任
シリマヴォ・バンダラナイケ スリランカ(旧セイロン) 1960〜65、70〜77、94〜2000 世界初の女性首相、複数回就任
ユリア・ティモシェンコ ウクライナ 2005、2007〜2010 オレンジ革命で台頭、親欧派の象徴的存在