
日本の有権者は約1億人。しかし、すべての人が理性的に政策を読み比べて投票しているわけではありません。
むしろ、「まともに文章が読めない」「他人の意見に流されやすい」「カルトや差別主義者に騙されやすい」といった層が、一定数存在しているという現実があります。
この記事では、そうした層の実数とその政治的インパクト、そして現実の選挙における票の動きについて冷静に分析していきます。
- 有権者の中に潜む「脆弱な情報受信層」
- 差別主義的・陰謀論的な政党の得票数は?
- なぜこの層は票になるのか?
- 世界における「票になる怒り」の事例
- 結論:その層を取り込むことで「選挙は勝てる」
- ただし:社会的分断のリスクも
- 最後に:リーチするか、再接続するか
- おまけ:社会に一定数存在する「操作されやすい層」の分析:5つの特性とその規模
有権者の中に潜む「脆弱な情報受信層」
以下のような特性を持つ人々が、少なからず存在します:
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機能的非識字(文章を読んでも理解できない)
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カルトや陰謀論、差別主義に共感・流入しやすい
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自分の意見を持たず、他人の声にそのまま従う
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不満や怒りをため込んでおり、簡単な敵味方図式に引き寄せられる
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情報リテラシーが低く、SNSやYouTubeで誤情報に晒されやすい
これらの特性は別々に見えるかもしれませんが、重なる層が一定数います。
それぞれの特性を持つ層の推定人口(※重複含む):
| 特性 | 該当率(推定) | 人数(有権者ベース) |
|---|---|---|
| 機能的非識字(情報が読めない) | 約10% | 約1,000万人 |
| カルト・陰謀論に影響されやすい | 約10〜20% | 約1,000〜2,000万人 |
| 他人の意見に流されやすい(同調的) | 約20%前後 | 約2,000万人 |
| 精神的脆弱性・不安定さ | 15〜20% | 約1,500〜2,000万人 |
| 強い不満・被害者意識を持つ層 | 不定(約20%以上) | 約2,000万人以上 |
→ 上記のうち、複数の特徴を持つ層が重なる領域を狙えば、500万〜1,000万の有権者層が存在しうると考えられます。
差別主義的・陰謀論的な政党の得票数は?
実際の選挙結果を見てみましょう。
例:日本第一党(桜井誠)
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2020年東京都知事選:178,784票(得票率約1.0%)
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2022年参院選比例:108,492票
例:N国党
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2022年参院選比例:174,631票
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2021年衆院選比例:420,495票
このように、「あの人が出てるから面白い」「体制批判っぽいから応援」などの感覚的投票で、10万〜50万票規模は実際に動くという現実があります。
なぜこの層は票になるのか?
主な理由は以下の3つです:
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敵と味方を単純に分ける構図が刺さる(例:外国人=悪、日本人=被害者)
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感情に訴える言葉が届く(怒り・不満・不安を代弁)
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SNSや動画で繰り返し刷り込む手法に弱い(受動的な情報摂取)
特に、「自分では考えない層」に対しては、「考えなくていい情報」が極めて刺さります。
「これが真実です」「政府は嘘をついています」「黙ってこれを広めてください」といった命令型の話法が効果的とされています。
あくまで仮説的にですが、以下のような戦略が有効になります:
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ビジュアル重視のSNS展開(X・TikTok・YouTube)
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「簡単な敵・味方の図式」(例:「外国人 vs 日本人」)
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「俺たち vs 上級国民」構図(=反エリート感情)
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難しい言葉を使わず、怒りや不満を代弁する話し方
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「自分の意見がない層」向けに指示型の話法
例:「これが正しい。これを広めてください」
世界における「票になる怒り」の事例
この構図は日本に限った話ではありません。
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アメリカのトランプ陣営:反エリート・反移民を掲げ、7,000万票超
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フランスの国民連合(旧・国民戦線):移民排斥とナショナリズムで第2党に
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ブラジルのボルソナロ:陰謀論と反知性主義で支持拡大
彼らが成功したのは、政治的信念というより、「怒っている大衆に寄り添う演出」を徹底して行ったからです。
結論:その層を取り込むことで「選挙は勝てる」
理性的な議論だけでは選挙は勝てません。なぜなら、選挙で票を動かす多くの層は「政策内容」よりも「感情の納得感」によって動くからです。
もし、以下の条件を満たす運動を仕掛けられれば:
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SNSでの強い発信力(X、YouTube、TikTok)
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明確な「敵の設定」(外国人、マスコミ、政治家、上級国民)
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シンプルで繰り返し使えるスローガン
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指示型・感情型の言語パターン
→ 数百万票の掘り起こしは現実的に可能です。
ただし:社会的分断のリスクも
短期的には「感情マーケティング」で票を取ることができるかもしれません。しかし、長期的には以下のようなリスクを伴います:
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偏見や差別を強化し、社会の分断が進む
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合理的な政策議論が成立しなくなる
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誤情報によって民主主義の根幹が揺らぐ
この問題の本質は、「なぜそうした層が生まれているのか」「なぜ彼らの不満に政治が応えられていないのか」を見つめ直すことにあります。
最後に:リーチするか、再接続するか
「そういう層を操作することで票が取れる」と考えるのは一つの現実です。しかし、それにどう向き合うかは、戦略だけでなく倫理の問題でもあります。
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扇動するのか
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教育するのか
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寄り添って新しい言葉を届けるのか
それを選ぶのは、政治家だけでなく、有権者である私たち一人ひとりです。
おまけ:社会に一定数存在する「操作されやすい層」の分析:5つの特性とその規模
現代社会における情報受信者には、大きなばらつきがあります。中でも、特定の情報に流されやすく、扇動されやすく、思考停止しやすい層には共通する心理的・社会的特徴が存在します。
ここでは、そうした層を5つの観点から整理します。
1. 「まともに文章が読めない」=機能的非識字(functional illiteracy)
OECDの調査(PIAACなど)によると、日本でも全成人の約1割が「機能的非識字」に該当しています。これは、表面的には読み書きができても、内容を正しく理解したり応用したりできない状態を指します。
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例:公共料金の案内文や職場の手順書を読んでも意味が取れない
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対応能力の低下により、詐欺・カルト・陰謀論に弱くなる
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世界的にはアメリカやイギリスで14〜20%が該当するとされています
2. 「カルトや差別主義者にすぐ騙される」=陰謀論・ヘイトスピーチへの感受性
心理学・政治学では、以下のような傾向が確認されています。
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陰謀論信奉者:成人の10〜25%が、Qアノン、反ワクチン、ディープステートといった主張に強く影響されやすい
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排外主義的傾向:日本を含む先進国で、10〜30%が外国人や特定集団への明確な偏見や敵意を持っている
こうした層は、批判的思考力が低く、感情的言説や強いナラティブ(物語)に引き込まれやすいことが特徴です。
3. 「性格が悪い」=共感性の欠如・ダークトライアド傾向
主観的な「性格の悪さ」ではなく、心理学的には以下の指標が該当します。
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共感能力が極端に低い(反社会性):人口の1〜3%が、いわゆる「サイコパス的」傾向(冷酷・他人を利用・罪悪感の欠如)を示す
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ナルシシズム・マキャベリズム・サイコパシー(ダークトライアド):これらの特性のいずれかを中〜高レベルで持つ人は、人口の約10〜15%程度とされます
この層は、利己的・排他的・他責的な言説を好み、他人の苦しみに無関心な傾向があります。
4. 「頭がおかしい」=精神疾患や現実検証能力の欠如
ここでは医学的な意味での精神疾患や、現実との接続の困難さを指します。
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統合失調症:日本では人口の約1%(現実検証の困難、妄想、幻聴など)
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重度のうつ病や双極性障害など:5人に1人が生涯のどこかで精神疾患を経験
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ただし、精神疾患=迷惑な存在、という偏見は誤りであり、多くの人は支援があれば日常生活を安定して送れます
この分類で注目すべきは、「現実の因果関係を理解できない人」が一定割合存在するという点です。
5. 「自分がない」=意見を持たず、集団に盲目的に従う同調傾向
日本社会ではとくに顕著ですが、「他人の意見に従い、自分の判断を持たない人々」は、政治的にもマーケティング的にも影響されやすい存在です。
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心理学でいうところの外的動機付け依存型
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群集心理に巻き込まれやすく、「多数派が言っていること」を無批判に信じる傾向
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リーダーやSNSインフルエンサーの意見をそのままコピーしてしまう
これは一見「大人しい」ようでいて、扇動されれば極端な行動(差別発言、陰謀論拡散)にも至りやすい特性です。



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