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雑記なブログ

なぜ統一教会は日本で「右翼的」なのか?──反共・愛国・天皇侮辱という矛盾をめぐって


 韓国発祥の宗教団体・統一教会(現在の世界平和統一家庭連合)は、日本国内において保守政治家との深い関係を築き、「愛国」や「反共」「憲法改正」といった右派的な政治主張を長年展開してきました。

 しかし一方で、その創設者・文鮮明は日本人に対して侮蔑的な言動を繰り返し、天皇制そのものを否定するような発言も行っています。

 一見すると矛盾に満ちたこの姿勢は、いかにして可能となり、なぜ信者の間で受け入れられてきたのでしょうか。

 本稿では、統一教会と日本右翼思想の結びつき、そしてその根底にある二重構造について整理します。

 

 


統一教会と日本の右翼:なぜ親和的なのか

 統一教会は1954年、韓国の文鮮明によって創設されたキリスト教系の新宗教です。文鮮明は北朝鮮で生まれ、共産主義政権により投獄された経験を持つため、徹底した反共思想を掲げていました。

 この思想が日本において展開されたのが、1968年設立の国際勝共連合(勝共連合)です。この団体は、共産主義に反対することを旗印に、街頭活動や保守系勉強会を通じて、「自虐史観の克服」「憲法改正」「道徳教育の復活」など、いわゆる日本保守派の主張と完全に一致するスローガンを掲げました。

 自民党の右派議員とも強いパイプを持ち、ときには選挙支援や地方議会への陳情活動も行ってきました。表面的には「愛国宗教」「右翼的政治運動」として、戦後日本の保守層と手を取り合うように見えます。


内部に潜む「反日的教義」と文鮮明の発言

 ところが、統一教会の内部に目を向けると、驚くほど反日的な教義や言動が確認されます。とりわけ創設者・文鮮明の以下のような発言が知られています。

  • 「日本はサタンの国であり、韓国に贖罪しなければならない」

  • 「天皇はサタンの血統」「私の前に天皇をひれ伏させる」

  • 「日本人はエバ国家として原罪を背負っており、献金や結婚で償うべき」

 これらは信者向けの講演や内部文書、さらには脱会者による証言などから確認されており、教義としても日本は韓国より「霊的に下位の存在」として位置づけられています。

 つまり、日本人に対して外向けには「保守的」「愛国的」な言葉を使いながら、内向けには「贖罪すべき民族」「韓国に従属すべき国家」と説いていたのです。


矛盾する思想を信者はどう受け入れているのか?

このような二重構造を、信者はどう捉えているのでしょうか。

  1. そもそも知らされていない場合
    多くの信者は、文鮮明の侮日的な発言や教義の全貌を知らず、表面的な「反共・愛国」スローガンだけを信じて活動しています。

  2. 教義で正当化されている場合
    統一教会には「日本=エバ国家、韓国=アダム国家」という教義があります。これは、神の摂理として日本が韓国に仕え、償いを行うべきだという思想であり、信者にとっては道徳的・宗教的に整合性のある「正義」なのです。

  3. 信仰によって矛盾を超える構造
    信者は「真の父母(文鮮明夫妻)に従うことが絶対」という教義の下で行動します。そのため、思想的矛盾や政治的な違和感は「悟りの不足」として処理され、批判的思考が働きにくくなる構造になっています。


スパイ防止法を望んだのもその文脈

 統一教会が日本で「スパイ防止法」の制定を長年求めていたのも、こうした反共主義と保守政治の文脈において理解されます。

  • 共産主義を「サタンの思想」とする統一教会は、左翼・市民運動・メディアを敵視し、「日本を守るにはスパイ取り締まりが必要」と主張。

  • 実際、1985年には中曽根内閣下でスパイ防止法案が国会提出された際、勝共連合は大々的な賛同運動を行っています。

  • 一方でこの法案は、市民監視や言論統制につながるとして世論の猛反発を受け、廃案になりました。

 教団にとって、スパイ防止法は「反共の象徴」であると同時に、「敵対者を封じるための法的枠組み」でもあったわけです。


終わりに:仮面としての「日本保守主義」

 統一教会が日本で保守思想に寄り添ってきたのは、思想的信念というよりも、「社会に受け入れられるための仮面」だったと見ることもできます。

 実際には、教義の深層には日本蔑視・天皇否定・韓国優越が貫かれており、それが信者に霊感商法や献金を促す「霊的負債論」の根拠ともなってきました。

 日本社会が統一教会を見つめ直すためには、この表面的な政治的言葉と内面の教義のギャップを直視することが必要です。