【諜報の闇】スパイを殺したら罪になるのか？──モサド、暗殺、そして国際法のグレーゾーン

「スパイを殺したらどうなるのか？」

　映画や小説で描かれるようなスパイ活動や暗殺作戦。現実世界でも、イスラエルのモサドやアメリカのCIA、ロシアのFSBなど、各国の諜報機関は裏の戦いを繰り広げています。

　けれど、ふと疑問に思いませんか？
　「もしスパイを殺してしまったら、それは殺人罪になるのか？」

　今回はこのテーマを、実例と法的観点から掘り下げてみます。

モサドの暗殺作戦とは？

　イスラエルの諜報機関「モサド」は、世界的に有名なスパイ組織です。その活動の中でも特に知られているのが、1972年ミュンヘン・オリンピック事件の報復作戦（通称：神の怒り作戦）です。

　この作戦では、パレスチナ武装組織「ブラック・セプテンバー」の関係者を世界中で追跡・暗殺。国家としての報復ではあるものの、国際法的には非常にグレーな行為でした。

　たとえ相手がスパイだったとしても、通常の平時において、他国でその人物を殺害すれば殺人罪が成立します。国家の主権や法制度を無視して他人を殺すことは、どんな理由があろうと原則として許されません。

　ただし現実は、これほど単純ではありません。

スパイを殺害した場合でも、以下のような例外や主張が存在します：

　暗殺を企てていたスパイを先手で殺した場合、自衛権の行使と見なす主張もあります。ただし、これには明確な証拠や差し迫った脅威の実証が必要。

　正式な戦争状態ではなくても、「非公式な紛争」状態であれば、スパイの殺害が事実上の戦闘行為と扱われることもあります。

　銃撃戦や現場での抵抗など、その場の危険性が高かった場合は「正当防衛」や「警察行動の一環」として処理されることもあります。

モサドが無関係の民間人を誤って殺害。現地で工作員が逮捕され、有罪判決を受けました。

ロンドンで元ロシア諜報員が放射性物質で暗殺。英国政府はロシア政府を非難し、国際問題に発展。

モサドが関与したとされるイラン国内の暗殺作戦。イラン政府はテロと断定し報復を誓いました。